イオンが人気な理由
有名になったイオン
今や全国どこにでも存在するイオン。特に近年、よく展開されているのがイオンモールだ。さまざまな専門店街がイオンモールの中に入り、大勢の客で賑わっている。実はイオンが広がりをみせたのはここ最近だ。それまでは、イトーヨーカドーなどが人気だった印象が強い。なぜ急激にイオンが勢力を伸ばしたのか。今回は、その秘密に迫る。
イオンが勢力を伸ばせた理由
その理由は3つある。1つ目は、専門店を大幅に増やしたことである。これまでのイオンはイオンとして商品を販売していた。例えば、紳士服だと紳士服コーナー、婦人服だと婦人服コーナーとして自社で売っていた。しかし、それだけでは他の商業施設と同じである。イトーヨーカドーなどの大規模なデパートには太刀打ちできない。そこで、1つの分野に特化した専門店をイオンという商業施設の箱に呼び、大きな商店街のようにしたのである。そしてその際、重要視したことは「流行」である。今流行りのファッションブランドを専門店街に誘致した。例えば、洋服だとユニクロやGU、H&MやZARA、WEGOなど、若者がよく購入するブランドを多数揃えたのである。そうすることによって、若者が気軽にウインドウショッピングのような感覚でイオンに来店しやすくしたのである。
さらにそれだけではない。同業の専門店を多数揃えることによって、競争が生まれる。その結果、専門店はライバルが多いため、値段や品質、流行など最先端のものを多数揃えて競うようになるのである。また、万が一専門店の人気が落ちてきた場合は、別の人気の専門店に変えてしまえばいい。このようにすることで、イオンは「流行を揃える地方の商店街」というイメージを客に植え付けたことで、一気に支持を得たのである。
2つ目は、コストを大幅に抑えたことである。まず、1番大きな支出は人件費である。しかし、イオンは売り場の大半を専門店にすることで、自社社員の人件費を大幅に削ったのである。また、専門店はアルバイトやパートを雇用することが多い。そのため、専門店も、テナント料だけ払えば出店できるので、有名なブランド企業が出店してくれやすい。このようなWin-Winな関係をつくることで、イオンと専門店はお互いにコストを抑えることに成功したのである。
次に大きな支出は土地代である。イオンは大きな規模で店を展開するため、土地代が多くかかる。そこで、田舎に進出したのである。確かに、イオンモールがある地域をよく見てみると、都会や中心地からかなり離れた何もないところに建っていることが多い。これは、都会に展開するよりも土地代などを安く済ませることができるからである。それだけではない。何もない田舎に進出することで、「あんな場所に大きな商業施設ができるのか」というインパクトの強さから、CMしなくても周りの地域住民に知れ渡る。そして、その地域住民全員を顧客にできるのだ。そうなれば、イオンに怖いものはない。なぜなら、その地域の顧客を全て掌握してしまっているのだから、同業者が進出することはないのである。そのため、半永久的にその地域を牛耳ることができる。いわば、ほぼ独占状態になるのである。
このようにこれら2つがイオン人気を支えているのである。
3つ目は、買い物からショッピングという体験の場へ変換したということである。これまでは商品を各階に分けて縦方向で、商品を売り出していた。例えば、紳士服だと2階、婦人服だと3階という感じである。しかしそれを辞め、横方向に長く商店街にいるように変えたのである。こうすることによって、各階へ移動する面倒な作業を減らし、ただひたすらまっすぐ歩くだけで、店が変わるという買い物客にとって、楽なスタンスに変えたのである。他にも、上の階へ移動するにはエスカレーターを積極的に採用した。こうすることで、エレベーターで人の流れが止まり、混雑して客がイライラすることを防いだのである。また、各階のフロアを吹き抜け式にして全てを見渡せるようにしたことで、閉塞感がなく、客が常にリラックスした状態で買い物ができる仕組みをつくった。そして、吹き抜け式であるため、客は上の階へ移動しなくても、上の階の店を見ることができる。そのため、客が「次にあの店に行きたい!」という好奇心を常に出せるような仕組みにしたのである。つまりイオンは、商店街が採用している仕組みを応用して、「立体的な商店街」をつくることに成功したのだ。これがイオンが人気の最大の理由である。
これからの商業施設
以上、見ててきたようにイオンは、専門店を増やしたこと、大幅なコストカットを行ったこと、ショッピングを体験の場に変えたことの3つを実行することで、これまでの商業施設に革命を起こした。このように、商業施設は単に商品を売るだけでは、Amazonなどのネットショッピングサイトに負けてしまう。これからは、買い物中の客が疲れないような工夫や、買い物をしているとワクワクするような体験を盛り込んだ施設を展開していくことが重要である。これからネット以外で商売を始めるには、楽しい体験型を意識してみると良いかもしれない。