釣り用ベストはおしゃれなのか?なぜ流行??
洋服の流行のながれ
移り変わりが激しい若者のファッション。つい数年前まで、メンズズボンは黒のスキニータイプが良いとされていた。筆者も黒スキニーを買って履いていた。しかし、気がつけば2年経たないうちに周りから黒スキニーを着用した男子が減っていくではないか。焦って知人に尋ねると、「もう流行ってないよ。」の一言。いつの間にか時代に取り残されてしまった。
そんな筆者の悲しい経験はさておき、現在は「釣り用ベスト」が男女問わず若者に人気らしい。釣り用ベストといえば、よく海や川で釣りをしているおじさんが身に着けている、あのたくさんポケットのあるベストのことだ。筆者の価値観は古いため、どう見てもこれがオシャレには見えない。では、なぜこれが流行っているのか。トレンドに目を向けながら分析していく。
近年の若者ファッションの傾向
ここで近年の若者のファッション傾向について見てみる。男子も女子も問わずこれまで人気だったのが、シンプルな服装だ。男子は特にスエットにボトムスやスキニー、女子もそれに似た服装が多かった。スエットの色も白や黒とシンプルなものが多く、清純さを感じられる服装が好まれる傾向だったように感じる。それはここ5年ほど前からだろうか。ごちゃごちゃした服装よりも清純さが若者のトレンドになっていた。この5年という数字はちょうど流行の節目とも見ることができる。洋服の流行は、おおむね5年から10年のスパンでガラッと変わる。そのため、ちょうど今回がその「清純さ」がトレンドになってからだいたい5年目になるのである。新しいファッションが出てきてもおかしくはない。そこで登場したのが釣り用ベストだったのである。
釣り用ベストが流行した理由
理由は3つある。まず1つ目は、コロナ禍で釣りを始めた層が初めて釣り用ベストを認識したということだ。これまでは釣りの専用服だった。しかし、近年のコロナ禍の影響でキャンプと共に若者に注目されるようになり、若い世代に釣りが浸透した。その結果、独特な釣り用ベストもにも注目が集まり、流行したと考えられる。
2つ目は、これまでのシンプルというトレンドの上に個性を出したかったということである。ここ数年はSNSの影響により、没個性的な服装が流行していた。しかし、やはりそうなると、一部でトレンドの波に乗りながら自分の個性を出したいという層が出てくる。これは前回、「JKや女子大生の間で何故、クリアケースが流行しているのか」で述べたように、「量産型×個性的」という若者の葛藤から生まれたトレンドである。これまで流行してきた白のスウェットにボトムスというファッションの上に釣り用ベストを重ねて着る。そうすると、量産型のファッションが一気に個性的な着こなしへと返信する。しかし、量産型のファッションを忘れたわけではない。それはちゃんと、釣り用ベストの間から垣間見えている。まさにクリアケースと同様の理論がこの釣り用ベストにも適用されているのである。これが2つ目の理由である。
3つ目は、そもそもアパレル業界が洋服のパターンを全て出し尽くしてしまったというところである。確かに洋服のパターンを見ると、全く新しいファッションのパターンというのは近年なかったように思える。近年流行したスキニーやプロデュサー巻き、シャツをズボンにインする着こなし方などは数十年前の焼き直しである。そのような状況を客も薄々気づいてきており、過去に流行ったものを取り上げても、「また昔の焼き直しか」としらけてしまう。そこでいっそこれまで全くファッションとして取り入れられなかった釣り用ベストを取り入れると斬新でウケるのではないかと考え、製作に至ったのではなだろうか。
ファッション文化の今後
洋服のファッションは移り変わりが激しい。その中で、今回は新しいファッションの1つである釣り用ベストを見てきた。これをファッションとして取り入れたのは恐らく日本が初めてであろう。いつもはアメリカからファッション文化が輸入されそれが流行してきた。これからは私たちの生活の身近なところにある衣服がトレンドの先端を走る時代になっていくのかもしれない。それの第1号として、今回釣り用ベストが誕生した。釣り用ベストが、マンネリ化した日本のファッション文化に風穴を開けてくれることを期待した。