「うっせぇわ」が人気の理由
「うっせぇわ」が人気
年明けから早くもヒット曲がでた。それはado氏が歌う「うっせぇわ」だ。この曲はYouTubeで話題となった。その後、タイトルやサビの「うっせぇわ」という表現に対し、子どもを持つ親から否定的な意見が出るなど、社会的に世間の話題を集めることもあった。そんな流行歌である「うっせぇわ」はなぜ流行したのか。今回はその真相に迫っていく。
「うっせぇわ」が人気の理由
この歌が人気の理由は3つある。1つ目は、現代の若者の思いを代弁した歌詞であるということだ。歌詞をよく読んでみると、「ちっちゃな頃から優等生 気づいたら大人になっていた」や「純情な精神で入社しワーク 社会人じゃ当然のルールです」といった現代の20代の思いを代弁するかのような歌詞である。
近年、4~5年前から真面目な学生が増えた。それは、指定校推薦で大学を目指す学生が増えたため、学生の間で真面目なこと=良いという風潮になっている。そのため、真面目な若者が急増した。いわゆるZ世代と呼ばれる層だ。彼らは、真面目で不満を口にしない。そのため、常に不満を心の中にため込んでしまっている。そうした精神状態の若者が多いため、ado氏の「うっせぇわ」が彼らの心に響いたのである。つまり、降り積もるストレスをado氏が「うっせぇ うっせぇ うっせぇわ」というサビで代弁してくれる。それがストレスの吐け口の代わりとなり、人気が出たのである。
2つ目は、ado氏が顔出ししていない女子高生という人物像にある。ado氏はこの曲の発表当時、現役の女子高生だった。しかも顔出しをしていない。このような背景から視聴者は、「プロの歌手」という認識より、「普通の女子高生」という人物として捉えたのである。その結果、自分の境遇と、歌の歌詞を照らし合わせて聞きやすくなり、若者から共感を得やすくなったと考えられる。
3つ目は、サビの「うっせぇわ」だ。確かに耳に残る言葉であるため、Jポップのサビには適した言葉だと思われる。しかし、このような暴言に近い言葉は、他のJポップではあまり使用されない。Jポップは、いろんな人が聞いて心地の良い歌詞を目指すため、応援系か、感謝系、恋愛系の言葉が多い。ところがこの曲はあえて、その路線から外れることによって、視聴者に衝撃を与え、注目してもらうといった手法をとったのである。つまり、今までのJポップのサビには無かった「怒り系」という新しいジャンルを作り出したのである。そのため、その新鮮さから、人気に火が付いたのだろう。前述したが、とくに現代は本音で話せる機会が少ない。そうしたことからも、この「怒り系」のサビがヒットした理由だと考えられる。
「うっせぇわ」の今後
「うっせぇわ」が人気の理由は、若者の思いを代弁していること、ado氏が顔出ししていない女子高生だったこと、「怒り系」という新たなジャンルを作ったことの3つが関係していた。とくに1つ目と2つ目の理由が、現代社会のニーズと上手く合致したことがヒットの決め手となったのだろう。このように、これからのJポップは「王道の売れ筋パターン」ではなく、こうした社会情勢を意識して曲を作った方がヒットする傾向にあるのではないだろうか。今後も、社会情勢に応じて新たな系統のJポップが誕生することが今から待ち遠しい。