仕事がきつい新入社員はなぜ増えたのか。
仕事がきついと感じる新入社員の増加
6月に入り、新入社員も入社して3ヶ月目。研修を終えて、社内のことを少しずつ理解してきた頃だろう。そんな時期に増加するのが、新入社員の早期退職だ。この傾向は年々増加しており、中には入社して1週間という非常に短い期間で退職を決断する人もいる。その理由は様々だが、一番多い理由は仕事がきついというものである。なぜ、仕事がきついと感じる新入社員が増えたのか。今回はその真相に迫る。
仕事がきついと感じる新入社員が多い理由
その理由は3つある。1つ目は、低賃金の職場が多く、モチベーションが上がらないということだ。このようなことを言うと、「最近の若いヤツは...」と言い出す人が多いと思う。しかし、これは紛れもない事実なのである。ここで、2020年の20代の手取りと1997年の20代の手取りを比べてみる。2020年の20代の平均給与は33万7千円だった。これに対し、1997年の20代の平均給与は33万6千円となっている。つまり、この20年間で若者の給料は減少しているのである。しかも、さらに税金の負担は1997年よりも大きくなっている。例えば消費税は3%だったことに対し、現代では10%、また、少子高齢化ということも重なって、支払う税金額は1997年に比べて大幅に増えている。従って、若者の手取り額は、1997年のときと比べて大幅に少なくなっているのである。そのため、せっかく入社しても、求められている労働量に対して、給料が少ないため、落胆してモチベーションが下がってしまうのである。これが1つ目の理由だ。
2つ目は、入社当時から超高速の情報社会ということだ。今の世の中はインターネットを利用して当たり前。ネット社会だ。会社間の情報のやり取りや取引先とのやり取りまで、全てはネットで行われる。これが問題なのだ。ネットのメールは、郵便などよりも早く届く。そのため、メールが来れば、その日のうちに処理していかなければならない。この作業は慣れている社員からすれば、そこまで苦しくないものかもしれない。しかし、これを初めて行う者にとっては、情報が速すぎて、ついていけなくなるのである。
この状況を例えるなら、大縄跳びがわかりやすい。数十年前はネットが無いところも多く、仮にネットがあったとしても速度が遅いものがほとんどだった。そのため、現代に比べると、大事な返信は郵送が多いため、ゆったりと返信を送ることができた。また、簡単な情報は電話で受けることが多かったため、郵送=重要度の高い情報、電話=すぐにこなせる仕事という大雑把な認識で対応することができた。そして、そうした業務に慣れてきたところで徐々にネットが登場。緩やかに情報伝達速度が上がったため、情報社会の加速についていくことができたのである。これを大縄跳びで表現すると、ゆっくり回している大繩の中に入って跳び、その跳んでいる間にゆっくりと速度が速くなるイメージだ。つまり、社会が少しずつ変化してきたため、それにゆっくりと適応することができたのだ。
しかし、これに対して現代は、超高速の情報社会。ネットをつなぎ、次から次へとメールが来るのは当たり前。しかも、重要度の高いメールや重要度の低いメールがバラバラに送られてくる。そのため、まずは全てメール文を読んで自分で判断するところから始まるのである。これを大縄跳びで表すと、縄跳びが、少しできるようになった新人がいきなり超高速で回されている大繩に入って今すぐ跳べと言われているようなものである。そのため、サポートをしなければ最初の段階で転んでしまう。その結果、仕事がきついと感じる新入社員が増えたのだ。
3つ目は、求められることの増加だ。新入社員といえば研修後、先輩に仕事を教えてもらいながら、お茶くみなどの雑務をするところから始まると考えている人が多いだろう。しかし、現代は全く違う。新入社員は即戦力でなければならないのだ。職場に配属されたときから、他の社員と同様、もしくはそれ以上の働きを求められる。そのため、入ったばっかりにも関わらず、お茶くみなどの雑務のほかに、自分の担当の仕事を割り振られ、いきなり自分の頭で考えながら仕事をする。しかも、昔と違って今は残業ができない。そのため、定時という限られた時間内に雑務と自分の担当業の2つを同時にしなければならないのである。しかも、それだけではない。先輩社員の仕事も機嫌を伺いながら、その定時の時間内で手伝わなければいけない。そのため、数十年前の新入社員よりも求められていることがはるかに多いのである。しかし、先述した通り給料は20年間よりも低い。これなら仕事がきついと感じるのは当たり前といっても良いだろう。
仕事がきつい新入社員の対処法
以上のように、仕事がきついと感じる新入社員が増えた理由を見てきた。その理由は、給料の低さ、超高速の情報社会、求められることの増加の3つだった。このように、今現在の新入社員は、過去の新入社員よりもかなり過酷になっている。この事態を今すぐ改善しなければ、退職していく新入社員が後を絶たなくなる。この事実を認識する人が増え、すぐに改善へ向かうことを願いたい。