なぜAKB48よりも乃木坂46、櫻坂46の人気が出たのか
爆発的大ヒットを記録したAKB48
2010年代。1つのアイドルグループが芸能界に革命を起こした。それは秋元康がプロデュースするAKB48だ。このアイドルグループは毎日、劇場に出演しているため、「会いに行けるアイドル」として有名になった。これは、これまでの芸能界では一般的だった「芸能人はスター」という常識を覆した画期的な方法である。そのため、アイドルを身近に感じられるということで、爆発的な人気を誇った。
その影響からか、AKB48には数々の姉妹グループが誕生した。例えば名古屋を拠点に活動するSKE48や大阪に拠点を置くNMB48、さらには海外にも進出し、インドネシアのジャカルタを拠点とするJKT48など日本だけでなく世界中に姉妹グループが存在する。その中でも今、日本で最も勢いがあるのが、乃木坂46と櫻坂46だろう。一見、アイドルに興味のない人からすれば、同じような姉妹グループに見えるかも知れない。
しかし、これらのグループは実はAKB48などの「会いに行けるアイドル」という軸以外にもう1つ軸を持つことで人気を博したのである。それは一体何か。そして何故、この2グループが人気なのか。今回はこの2つに焦点を当てながら見ていく。
AKB48の人気が低迷した理由
まずはAKB48から見ていく。このグループは数年にわたり、全ての世代の人々に莫大な影響を与えてきたことから、これからもAKB48は長くアイドルグループの頂点に君臨すると思われた。しかし、全盛期のメンバーが相次いでグループを卒業すると、人気は失速。2015年~2016年あたりからその人気は乃木坂46に負けるようになってきた。では、AKB48と乃木坂46のどこが違うのか。それはメンバーの多様性と言えるだろう。
AKB48はグループの人数が多いため、多種多様な系統のアイドルがいる。例えば、王道アイドル系の渡辺麻友やボーイッシュなショートカットの篠田麻里子、ギャル系をイメージさせる板野友美、そしてAKB48の顔とも言える存在の前田敦子など、メンバーそれぞれに系統があった。そのため、人間の千差万別の好みに対応できたことから、様々な人々を虜にできたのである。簡単に言えば、AKB48は、どんな種類のものでも揃う「アイドルの百貨店」のような存在になっていた。これだけを聞くと、AKB48は失速することなく、半永久的に大人気が続いてもおかしくはない。ではなぜ乃木坂46、櫻坂46が台頭してきたのか。
乃木坂46と櫻坂46の台頭
その理由としては冒頭で先述したAKB48にはない「もう1つの軸」が、これらのグループにあったということだ。乃木坂46で言えば、それは「清楚な均一性」という軸である。つまり、AKB48の「アイドルの百貨店」に対して、乃木坂46は「清楚アイドルの専門店」を展開したのだ。そのため、乃木坂46のグループメンバーを見ると、それぞれの個性が際立っているというよりは、グループメンバーが「清楚」という縛りの中で魅力を出している。おそらくこれが人気の秘訣であろう。大衆はAKB48という大きな百貨店で買い物をし過ぎた。そのため、今度は需要が1つに絞られた専門店に買い物をしたくなったのである。そこに目をつけた秋元康は、そのときの一番人気の高かった専門店である「清楚」に着目して乃木坂46を作ったのではないだろうか。
人気出た秘訣は他にもある。それは、現代の世の中が均一性を重視した社会になってきたという影響がある。特にここで注目したいのが若者の服の変化である。10年前は、それぞれに系統があった。例えばストリート系やおとなしめの服、かわいい系やギャル系など多様性があった。しかし、ここ数年を振り返ると、若者の服は似たような系統の服が多いことに気づく。10年前のように服装で明確に系統を分けることが難しい。これは、恐らくスマートフォンが普及し、SNSが生活の一部に組み込まれたことで、服装は「個人の系統を表すもの」から、SNSのいいね!をたくさん集める「承認欲求を満たすもの」へと変化を遂げたことが原因と考えられる。そのため、より良いね!が集まりやすいたくさんの人から好まれる服装を着る若者が増えたため、均一化が起きたのではないだろうか。話が脱線したが、このような現象から、均一性を無意識に追い求めるという思考になり、「清楚な均一性」の軸を持つ乃木坂46に軍配が上がったと考えられる。
では、櫻坂46はなぜ人気なのか。実はこのグループの軸は乃木坂46と同じ「清楚」にありながら、さらにもう1つの軸を持っているのである。それは、「均一性への反発」である。櫻坂46(改名前の欅坂46を含む)の歌詞に注目すると、均一性への反発心が多数見られる。例えば改名前の欅坂46の「サイレントマジョリティー」では、「君は君らしく生きていく自由があるんだ。大人たちに支配されるな」「NOと良いなよ」など均一性に反発した歌詞が出てくる。他にも、櫻坂46の「Nobody’s fault」では、「他人(ひと)のせいにするな」「それならいっそ孤独を選びな!」など力強い言葉で集団や多数に抵抗することが述べられている。つまり、乃木坂46の「清楚な均一性」という軸を持っていることに対して「清楚な反均一性」という軸を持つことで、今度は乃木坂46の均一化に飽きた層を櫻坂に取り入れたのである。これは秋元康の恐るべき手腕といえるだろう。
従って、これら2つのグループは時代に合わせた軸を持つことで、AKB48よりも人気を得たのである。
ここで気づいた人も多いと思うが、櫻坂46で「清楚な反均一化性」が推し進められると、いずれ再び多様性のAKB48の人気が再燃する可能性があるということだ。つまり、48、46グループはそれぞれAKB48→乃木坂46→櫻坂46→AKB48とそれぞれのグループの特性を循環させているのだ。このようにしておけば、48,46グループが衰退することはない。もし万が一仮に、衰退しかけても、別の軸を背負わせた48,46グループを立ち上げて、この循環の中に当てはめれば良い。従って、AKB48は人気がなくなったわけではなく、社会のニーズに合わせて他の姉妹グループに順番を譲っただけであり、単に人気がなくなったわけではないのである。
48,46グループのこれから
48,46グループはこのようにして社会のニーズに合わせてきた。このシステムは、社会のニーズが変われば新たな軸を持ったグループを増やすことで、グループの人気を維持することができる。そして、有名なことではあるが、流行は繰り返す傾向にある。そのため、一時的に今は人気が低迷したとしても必ずいつか人気に火がつく可能性を秘めている。現在のAKB48は、まさに「チャンスの順番」を待っているかのようだ。