タピオカブームが不況の前触れを表す理由
過去に2度起きているタピオカブーム
2019年、日本中でタピオカブームが起きた。Gong cha(ゴンチャ)や、春水堂(チュンスイタン)の店の前に長い行列を見かけた人は多いだろう。実はタピオカブームは2019年が初めてではない。過去に2度、ブームを起こしていた。
第1回目のブームは1992年。このときはココナッツミルクにタピオカを入れる「食べるタピオカ」が流行した。
第2回は2007年。1992年のブームとは違い、タピオカをゼリーやたい焼きの生地に練り込むことや、ジュースの中に入れる「混ぜるタピオカ」が流行した。
第3回は記憶に新しい2019年のタピオカティーの「飲むタピオカ」ブームである。
このように、過去に約10年の間隔でブームが起こっている。ここで注目したいのが、そのブームを巻き起こした年である1992年、2007年、2019年。実はこの年は全て、日本で経済的な大打撃を与えた、あるいはその前触れの年だった。
タピオカブームの到来は不況の前触れ
例えば、1992年はタピオカブーム時にバブルが崩壊。大手金融機関が次々に倒産し、デフレ不況を迎えた。続いて、2007年は2008年のリーマンショックの前触れ。ブーム直後にアメリカを起源とする金融危機に直面した。そして2019年、ブーム直後にコロナ・ショックが発生。新型コロナウイルス感染症の拡大により経済が低迷し、現在も世界中で深刻な被害が続いている。
この状況から、経済界ではタピオカブームの到来=不況の前触れと言われている。しかし、タピオカブームと不況の因果関係は詳しくわかっていない。そのためこの現象は、経済界では経験上よく当たる事物を示す「アノマリー」として扱われている。
そこで今回はタピオカブームと不況の前触れの因果関係を掘り下げ、経済的な視点と世間の動向から分析した。
タピオカブームと景気の変遷
第3次タピオカブームが発生する前年の2018年~2019年は日本の景気が良かった。景気変動を示すCI指数(Composite Indexes)に注目すると、その様子がよくわかる。
特に、タピオカブームが始まったとされる2018年は2010年~2020年までの間でCI指数が最も高くなっていることがわかる。
この現象は2007年の第2次タピオカブームでも同じ現象が起きている。先ほどと同じく、景気変動を示すCI指数(Composite Indexes)を見ると、2007年にピークに達したときに大規模な第2次タピオカブームが起きている。この第2次タピオカブームが第3次のブームと異なることは、CI指数が第1ピークを過ぎた1年後にタピオカが流行していることである。これについて筆者の推測では、2007年のCI指数である第1ピーク時で景気が良くなり日本の海外からの輸入量が増加した。そのとき過去に流行したタピオカをもう1度輸入し、日本でブームを起こそうと考え、輸入したとみている。このブームは2007年にタピオカがまとまって輸入されてから約1年間ブームが続いた。その要因としては、第2次タピオカブームは第1次タピオカブームと異なり、「食べるタピオカ」から、タピオカをゼリーやたい焼きの生地、ジュースに混ぜて食べる「混ぜるタピオカ」に大きく進化し、バリエーションが豊富だったからと考えられる。
そのため、以上のことからタピオカは好景気のピーク時に流行することから、不況の前触れを示すということが、経済的に正しいと読み取れる。
しかしここで問題なのは、1992年の第1次タピオカブームだ。この年は、第2次・第3次タピオカブームとは違い、景気後退前ではなく、景気後退時にブームが起きている。このことは景気動向を示すCI指数を見ても顕著である。しかし、ここで注目すべきことはCI指数ではなく、1992年の当時、世間ではまだ好景気の雰囲気(俗に言うこれがバブル)が蔓延していたということだ。そのため、海外からの輸入量が多く、物珍しいタピオカが日本に輸入され、それが一躍有名になったことでブームが起きたとみられる。
タピオカにかける思い
以上のことから、タピオカブームは好景気時のピークを示すため、不況の前触れであるということが正しいと判明した。
現在は第3次タピオカブーム後のコロナ・ショックまっただ中。タピオカブームは約10年周期で起きている。第4次タピオカブームが予想される2028年直前の好景気が今から待ち遠しい。